2008-06-11

過払い訴訟の現状

 本日、名古屋地裁にて大手消費者金融のT社相手の請求額約800万円の訴訟の口頭弁論が終結し、7月上旬に判決の言渡しがされることになりました。

 本件は、無担保・無保証の案件でありながら、請求額が多額であったこともあり、訴訟外での話し合いで解決を図ることはできませんでした。

 どのような判決が出るかわかりませんが、いずれにしても控訴審まで解決がずれこむ可能性が高いと思います。

 少し前までは一度も完済をしていない取引については、ほぼ100%こちらの希望金額で判決に至ることなく解決できていましたが、最近はすんなりと終わらないことも多くなっています。

 どの点が争いになっているかですが、過払い利息の返還請求権(不当利得返還請求権)の消滅時効の起算点についてです。

 現在でも、時効の起算点は取引終了時点であるというのが、実務における大勢です。

 しかし、最近下級審において、時効の起算点は、個別に返還請求権が発生した時点とする判決(業者がいうところの「10年時効の判決」)が出るようになっています。

 この理論を適用すると、取引が途切れることなく続いていたとしても請求する日から10年を遡っての過去の過払い利息についての請求をすることができなくなります。

 上記の訴訟事案に「10年時効」の理論を当てはめると800万円から300万円に金額が大幅に減額されてしまいます。

 下級審で借主不利の判決が出ている原因としては、「10年時効」を採用した福岡高裁平成18年9月15日判決を借主が不服として最高裁に上告したにもかかわらず、最高裁が上告を受理しなかったことが考えられます。要するに最高裁への上告理由の「原審の判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反」は福岡高裁の判決には無かったとの認定をした、つまり、「10年時効」容認の意思を消極的な形で最高裁が示したと考える余地が生まれているということです。

 借主側としては、完済がない取引の場合における過払い訴訟でも、被告から「10年時効」の主張があれば、消滅時効の起算点を取引終了時として請求する根拠を、最高裁判決事案の取引履歴を検証するなどして、丁寧に準備書面を作成することが必要になってくるかもしれません。

                                 司法書士 馬ちゃん