先日の新聞に次のような記事が掲載されていました。
埼玉県深谷市で、元暴力団組員が行った生活保護費の不正受給に関する、生活保護法違反での立件を埼玉県警が見送ったというものでした。
市の担当職員は、元暴力団組員の申請内容が虚偽であることを認識し、さらに埼玉県の監査係から不正受給の疑いを指摘された後も、その指摘を無視して、生活保護費の支給を続けていたということです。
生活保護費の不正受給は、色々な犯罪の構成要件を構成する行為です。
市側が申請の内容を信じて生活保護費を支給していれば詐欺罪に該当しますし、申請行為を暴力的・威圧的に行えば、恐喝罪に該当します。
しかし、今回の事件では、埼玉県の監査係の指摘により、不正受給の認識が職員にはあったものと考えるのが自然ですから、市側が騙されていたとはいえず、詐欺罪では立件できず、また、暴力的・威圧的な行為があったかというとそういうわけではなく、むしろ担当職員が自ら申請内容を用紙に記載することもあったということで、とても恐喝罪での立件もできない。
最後に、生活保護法違反についても、市側は被害者ではなく、むしろ積極的に不正受給に協力したものと判断し、これについても立件は難しいとの結論に至ったようです。
生活保護についての問題点として、必ず挙げられるのがこの不正受給の問題です。
自分よりも強い者には弱く、自分よりも弱い立場の者には強くという、生活保護の理念とは決して相容れないようなことが実際起きているということを改めて認識した事件でした。
余談ですが、市役所職員は、不正受給により何らの利益も受けていないので、背任罪などで立件することは難しいようです。
少しでも元暴力団員から不正受給した生活保護費の返還があればいいのですが。
司法書士 馬島 洋介
2008-08-13
生活保護費の不正受給が続発する背景は?